木枯らし吹いたら 〜天上の海 掌中の星
 

今年は随分と前倒しな感があった秋だったはずなのに、
朝晩の冷え込み以上に、昼の内は何とか気温も上がってたせいか、
それともこちらの運動量が結構あったからか、

 「うあ、寒いなぁ。」

すとんと気温が下がった朝、
何だこりゃとちょっと驚いたような声を出してたルフィであり。
衣替えはとっくに済んでいて、
制服も上は長袖のブレザー着用となり、
ズボンの方もしっかりした生地のそれに替わってはいたが。
それでも ひょいと開けたドアの隙間から
わあと声が出たほどの冷たい風が吹きつけて、
お元気な坊やをたじろがせる。

 「マフラーか手ぶくろとか要るか?」

洗濯機の残りタイマーを確認しがてら、
玄関までお見送りにと足を運んで来ていたゾロが、
頭上に手を上げ、何もないところをひょいと掻き回せば、
何もなかった中空から、見覚えのある七色マフラーと手套とが現れて、
そのまま大きな手へふわっと掴まえられてしまうものだから、

 「いつも思うんだけど、それって便利だな。」
 「それ?」
 「その“どこでも四次元ポケット”だ。」
 「何か合体してないか?」

ゾロさん、突っ込むのそこじゃない。(笑)

 「俺もそれ使えたらなぁ。」

う〜ん、なんて感慨深そうな顔になっているものだから、
忘れ物が減るだろになんて殊勝なことを言うのかと思えば、

 「好きな時に冷蔵庫の中からチーズだのヨーグルトだのプリンだの持ちだせるしよ。」

やっぱりそっちかというお約束の言が飛び出して。

 「そうか、やたらとスィーツ系の買い置きが消えると思ったら、
  やっぱお前がのべつ幕なしに持ち出してたんだな。」

……他の誰が持ち出すんですか、ゾロさん。

 「言っとくがな、
  この取り出しの術は、ただ次元の壁を通れりゃいいってもんじゃない。
  きっちりと何処にある何っていうのが判ってないと、
  要らんところばかりごそごそと引っ掻き回すばかりで時間を食って、
  しかも後片付けもしなきゃなんねぇから、
  結果、二度手間・三度手間になっちまうんだよ。」

そんな風に、見た目ほど簡単なことじゃねぇんだぞと釘を刺したゾロであり、
実は大変なことを、さも簡単にできるんだよと見せることがプロの技だもんなと、
やっぱりちょっとばかり斜めに感心していたルフィさんだったそうで。
そして、

 『そうですね、本来は緊急事態に特別な装備を呼び出すとか、
  戦闘中に非力な存在を無事なところへ早急に避難させるとか、
  そういった折に使う技ですしねぇ。』

だっていうのに日常の中でも結構使っていましたね。
ずぼらをしちゃあ収納庫をとっ散らかして、
片づけるまで刀の修業はお預けだという罰を食らってたあの子だったの、
思い出してしまいましたよと、
最強破邪様の育ての親が“前世”だという黒須先生から、
そういう余談を聞いたルフィさんだったのは、ほんのちょっぴり後日のお話…。



      〜Fine〜  15.10.28.


 *拍手お礼、久々の入れ替えです。
  急にお寒くなりましたが、
  皆様どうかご自愛くださいますように。
  季節感入れちゃうと、
  せめて春には入れ替えなきゃいかんのかなぁ…。(おいおい)

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